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個人事業主の必要経費はどこまで認められる?項目一覧と判断基準を解説

2026年5月27日

   

会社員から個人事業主になると、自分で対応しなければならない業務の代表例が「経費の計上」です。
実際に個人事業主を検討している方の多くは、

  • 「個人事業主になったら、どこまで経費として申告できるの?」
  • 「そもそも経費はどうやって管理するの?」

といった悩みを抱えていることでしょう。しかし、基本ルールを理解すれば経費計上は大きなメリットになります。この記事では、経費として計上できるものから必要書類、想定されるペナルティまで詳しく解説します。

個人事業主における「必要経費」の考え方と判断基準

経費とは、収入を得るために必要だった 事業活動上の支出 を指します。個人事業主が事業を進めるうえでかかった費用は原則として経費扱いとなり、課税される所得を減らす効果があります。

たとえば所得税では、個人の収入からその収入を生み出すために使った経費を差し引いた金額が「所得」として課税対象になります。つまり収入があった場合、その収入に対応する経費を計上することで実際に課税される利益を減らせるわけです。

会社員の場合、経費の処理は会社が行ってくれますが、個人事業主はこの作業を自分で管理する必要があります。事前に知識を身につけておきましょう。

事業を行う上で直接必要な支出であること

国税庁が公表している「No.2210必要経費の知識」によると、事業所得などの計算上、必要経費に算入できる金額は、①総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額、②その年に生じた販売費・一般管理費その他業務上の費用の額、とされています。いずれも、事業の売上を生み出すため、あるいは事業を運営していくうえで欠かせない出費であることが前提です。

たとえば、デザイナーが仕事で使うパソコンを購入した費用は、売上を作るための道具であるため経費として認められると考えられます。一方で、同じパソコンでも完全に趣味のゲーム専用であれば、事業との関連性がないため経費にはなりません。

なお、業務用と私用の両方で使う場合は「家事関連費」となり、取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる金額に限り必要経費になるとされています(いわゆる家事按分)。つまり、その出費が事業の収益や業務にどう貢献しているかを、論理的に説明できるかどうかが重要な判断基準となります。

何気なく支払ったお金であっても、常に「これは自分のビジネスに必要な支出だろうか」と問いかける習慣を持つことが大切と言えるでしょう。

参考:国税庁「No.2210必要経費の知識」

プライベートの支出は経費にできない点に注意

個人事業主は会社員と異なり、事業の財布と個人の財布が一体化しやすい傾向が見られます。そのため、プライベートの支出が帳簿に混ざらないよう細心の注意を払うことが重要と言えるでしょう。

国税庁「No.2210必要経費の知識」でも示されているとおり、家事上の費用(事業主自身の生活費や娯楽費など)は必要経費にはなりません。もし誤って個人の生活費を経費に含めてしまうと、利益が不当に少なく計算され、本来支払うべき税金が減少してしまいます。

このような誤った経理処理は税務調査で指摘の対象となり、追徴課税などのペナルティを受けるリスクが高まる点に留意が必要です。たとえば自宅兼事務所の家賃や水道光熱費、通信費のように業務と私生活が混在する支出については、業務に使った割合を合理的な基準で算出し、その分だけを経費として処理する必要があります。

日々の買い物で事業用の消耗品と家庭用の日用品を一緒に購入するような場面では、レジで会計を分けてレシートを別々に発行してもらうなどの工夫を取り入れてみるのもよいでしょう。

自分の生活を豊かにするための支出と、事業を成長させるための投資を明確に区別する意識を持つことが、正しい経理の第一歩となります。

参考:国税庁「No.2210必要経費の知識」

計上できる経費の上限はない

個人事業主が計上できる経費に、基本的に「ここまで」という金額制限はありません。事業に必要な支出であれば高額でも経費として認められます。ただし、減価償却資産のようにその年に全額を費用化できないものや、家事関連費のように業務分のみが算入できるものなど、科目ごとに取扱いが定められている点には注意が必要です。

また、収入に対して経費が極端に多い場合には、税務調査などで「本当に事業に必要だったのか」と事業との関連性を確認されることがあります。金額の多寡そのものよりも、その支出が事業の遂行上必要だったことを客観的に説明できるかどうかを意識して計上することがポイントです。

個人事業主が経費にできる主な勘定科目一覧

個人事業主が経費にできる主な勘定科目一覧

具体的な勘定科目を把握することで、日々の帳簿付けがスムーズに進むようになります。代表的な経費項目を整理して確認していきましょう。

勘定科目  該当する支出の主な内容  経理処理における具体的な事例  記帳時の注意点とポイント 
地代家賃  事務所や店舗を借りるための費用  オフィスビルの賃料や、仕事場として借りているアパートの家賃などが該当します。  自宅兼事務所の場合は全額を経費にせず、事業で使っている部分だけを計算して計上することが求められます。 
水道光熱費  業務で使用する電気、ガス、水道の料金  パソコンを動かすための電気代や、飲食店における調理用のガス代などが当てはまります。  こちらも自宅兼用の場合は、作業時間やコンセントの数など合理的な基準で分ける手続きが必要となります。 
通信費  インターネット回線や電話などの利用料金  プロバイダ料金、スマートフォンの通信費、事業用の郵便切手代などが含まれます。  プライベート用の携帯電話を仕事でも使っている場合は、通話明細などから業務割合を割り出すと良いでしょう。 
消耗品費  使用可能期間が短く、少額な物品の購入費  コピー用紙、ボールペンなどの文房具や、金額が低いパソコン周辺機器などを指します。  青色申告をしている個人事業主には「少額減価償却資産の特例」があり、2026年3月31日までに取得した資産は30万円未満、2026年4月1日以降に取得した資産は40万円未満であれば、年間合計300万円を上限として一括で経費にできる制度が用意されています。 
旅費交通費  業務のための移動や宿泊にかかる費用  電車やバスの運賃、取引先へ向かうためのタクシー代、出張時のホテル代などが該当します。  ICカードで移動した場合は、利用履歴を印字してどこへ何の目的で行ったかをメモしておくことが大切です。 
接待交際費  取引先などとの円滑な関係を築くための費用  クライアントとの打ち合わせを伴う飲食代や、お中元・お歳暮などの贈答品代となります。  友人との単なる飲み会は対象外となるため、相手の会社名や氏名、目的を領収書の裏に記録しておくべきと言えます。 

地代家賃や水道光熱費などの固定費

毎月の支払いが一定して発生する固定費は、経費の中でも大きな割合を占める傾向にあります。

事務所の家賃をはじめ、事業活動に欠かせない電気代やインターネット回線などの料金が該当すると言えるでしょう。これらを正確に計上することで、年間の利益額を適切に抑える効果が期待できます。

とくに店舗を構えて営業している個人事業主の場合、テナントの賃料や水道料金は事業専用の支出であるため、全額を必要経費として計上できます。ただし、敷金や保証金のように将来返還される予定のお金については、経費ではなく資産として扱うルールになっている点に注意が必要です。

毎月の請求書や引き落とし明細をしっかりと保管し、漏れなく帳簿に記録する習慣をつけていきましょう。

消耗品費や旅費交通費などの変動費

日々の業務状況によって金額が変わる変動費も、忘れずに管理すべき重要な項目となります。

仕事で使う文房具や少額の備品を購入した際は、消耗品費として処理することが一般的です。

また、クライアントとの打ち合わせ先に向かうための電車代やタクシー代は、旅費交通費として計上することができます。交通費については領収書が出ないケースも多いため、出金伝票と呼ばれる書類を作成して乗車区間や運賃を記録しておく工夫が求められます。

このような細かい出費であっても、一年間積み重なることでまとまった金額になるため、決して軽視することはできません。経費を適正に申告するためには、使ったその日のうちに手帳や会計ソフトへ入力しておくことが理想的と言えます。

租税公課や支払手数料などの諸経費

事業を運営する上では、各種税金や銀行の手数料といった諸経費も発生してきます。

個人事業税は全額を、固定資産税や自動車税については業務に関連する部分を、印紙代とあわせて「租税公課」という勘定科目で経費に計上することが認められています。

一方で、振込手数料や各種証明書の発行にかかる手数料などは、支払手数料として記帳することになるでしょう。

ネットショップを運営している場合、決済代行会社に支払うシステム利用料などもこの支払手数料に含まれるケースが多く見受けられます。これらの費用は一つひとつの金額が小さくても、事業を円滑に進めるためには避けて通れない支出と考えられます。

銀行の通帳明細などを定期的に確認し、事業にかかった手数料を適切に拾い上げるように意識してみてください。

経費にできない支出と注意すべき項目

経費になりそうで実は認められない支出も多く存在しています。間違えて計上すると後から税金を追徴されるリスクがあるため、しっかりと確認しておくことが大切と言えるでしょう。

支出の項目  経費として認められない理由  確定申告における正しい取り扱いの方法  注意点と誤りやすいポイント 
所得税や住民税  個人に対する税金であり事業の費用ではないため  経費にはせず、事業主貸という勘定科目を使って個人の引き出しとして処理します。  事業税や消費税(税込経理の場合)は経費にできるため、税金の種類ごとに区別することが重要と言えます。 
国民健康保険料  個人の社会保障制度に対する支払いであるため  経費ではなく、確定申告書の社会保険料控除の欄に記入して所得から差し引きます。  国民年金保険料も同様に控除の対象となるため、支払った証明書を大切に保管しておく必要があります。 
個人的な旅行代  売上を獲得するための業務活動に関連しないため  完全にプライベートな支出として扱い、事業の帳簿には一切含めないようにします。  出張のついでに観光をした場合は、事業に関する旅費部分のみを合理的に計算して抜き出す作業が求められます。 
家族への生活費  生計を一にする家族へのお金の移動は経費にならないため  事業の口座から生活費を引き出した場合は、事業主に対する貸付や引き出しとして記録します。  家族を従業員として雇う場合は、青色事業専従者給与の届出を行うことで、労務の対価として相当な金額の範囲で給与を必要経費にできる特例があります。ただし、上限は「相当であると認められる金額」であり、過大な部分は認められません。 

事業主自身の税金や社会保険料

個人事業主が納める税金や保険料の中には、経費になるものとならないものが明確に分かれています。

事業主自身の所得税や住民税は、個人の所得に対して課される税金であるため、事業の必要経費にすることはできません。同様に、国民健康保険料や国民年金保険料も個人の社会保障にかかる費用であり、経費には該当しないルールとなっています。

ただし、これらを経費にできなくても、確定申告の際に社会保険料控除として所得から差し引く仕組みが用意されているため安心してください。

事業用の口座からこれらの税金を支払った場合は、事業主貸という勘定科目を使ってプライベートな出金として処理することが求められます。税金という名目であっても、すべてが経費になるわけではないという前提を理解しておくことが大切と言えるでしょう。

事業と関係のない個人的な飲食や旅行

事業用のお金を使って休日に家族と外食をしたり、個人的な旅行に出かけたりした費用は、当然ながら経費にはなりません。接待交際費として認められるのは、あくまで取引先や仕事関係者との関係を良好にするための飲食代などに限られているからです。

税務調査においても、これらの支出が本当に事業に関連しているかどうかは厳しくチェックされる傾向にあります。もし一人でカフェに入って仕事をした場合のコーヒー代であれば、雑費として認められる可能性は高いと考えられます。しかし、複数人での観光目的の旅行代金を無理に旅費交通費として計上するような行為は、申告の正当性を疑われる原因となるでしょう。

公私混同を避け、客観的に見て事業のための出費だと胸を張って言えるものだけを拾い上げる姿勢が求められます。

生計を一にする家族への支払いと例外規定

個人事業主が一緒に生活している配偶者や親族に対して支払うお金は、原則として経費にすることが認められていません。これは、家族間でのお金の移動を自由に経費にしてしまうと、不当に利益を減らして税金を逃れることが容易になってしまうからです。

しかし、家族が実際に事業を手伝っている場合、その働きに対する対価を一切経費にできないのは不公平だと言えるかもしれません。そこで、青色申告を行っている場合には、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出することで、家族への給与のうち労務の対価として相当と認められる金額を必要経費にできる特例が存在しています(過大な部分は認められません)。

この制度を利用するためには、対象となる家族が専らその事業に従事していることなど、いくつかの条件を満たす必要があります。家族の協力を得て事業を運営している方は、このような制度を正しく活用することで、適正な節税効果を得ることができるでしょう。

個人事業主が経費を計上するメリット

経費計上は「面倒くさい」と感じやすい業務ですが、正しく行うと節税につながります。所得が実際よりも多く見積もられることを防ぎ、結果として税金負担を軽減できます。さらに資金の動きが明確になり、予算計画が立てやすくなります。

支出を正確に記録するためには、プライベート用と事業用でクレジットカードや口座を分けると帳簿付けがスムーズです。

経費計上に必要な書類

経費を計上する際は、支出が事業に関係するものであると証明できる書類が必要です。具体的には「いつ」「誰が」「いくら」「誰に」「何のために」がわかる内容が求められます。

  • 領収書
  • クレジットカード利用明細
  • 銀行振込記録
  • 納品書
  • ネット購入時の確認メール・画面 など

電子帳簿保存法の改正により、デジタルデータの保存要件も厳格化されています。日頃からレシートや明細の保管を徹底し、月別・カテゴリ別に整理しておきましょう。

領収書を紛失した場合の対処法

領収書を紛失した場合は、まず発行元に再発行できるか確認します。ただし、不正利用防止の観点から再発行に応じない企業もあります。その場合、レシートやクレジットカード明細で代用できるか検討してください。前述の五要素が確認できれば経費として処理できる可能性があります。

自宅兼事務所で活用する「家事按分」のルール

自宅の一部を事務所として使っている場合、支出の一部を経費として扱うことが認められています。この仕組みを正しく活用することで、適正な経理処理につなげることができるでしょう。

按分の対象となる支出  合理的な計算基準の例  計算方法の具体的なイメージ  適用する際の注意点 
地代家賃(アパート等)  自宅全体の床面積と業務スペースの面積の比率  全体が50平方メートルで仕事部屋が20平方メートルの場合、家賃の40パーセントを経費とします。  プライベートな寝室やリビングの面積を含めないように、図面などを用いて正確に計算することが求められます。 
電気代  使用している時間やコンセントの数、床面積  一日のうち仕事で8時間使用している場合、一ヶ月の電気代の約33%を経費として計上します。  季節によって使用量が変動する場合でも、年間を通じて一定の合理的な基準を維持し続けることが大切です。 
インターネット通信費  業務で使用している日数やデータ通信量の割合  週に5日仕事で利用していると仮定し、月額料金の70パーセント程度を経費に算入します。  家族全員で動画視聴などに使っている場合は、業務利用の割合を少し低めに見積もるなどの配慮が必要と言えます。 
自動車の維持費(ガソリン・車検)  走行距離や業務で使用した日数の比率  月間の総走行距離が1000キロで仕事の移動が600キロの場合、関連費用の60パーセントを適用します。  走行メーターの記録や業務日報などの客観的なデータを用意して、事業割合を証明できるようにしておくべきでしょう。 

家事按分の基本的な仕組みと計算方法

個人事業主が自宅を仕事場として使っている場合、家賃や電気代などの支払いには事業用と家庭用の両方が含まれている状態になります。このような支出を家事関連費と呼び、事業を遂行する上で直接必要であったことが明らかにされる部分のみを必要経費に算入することが可能です。

この事業用の割合を計算して経費を分ける作業のことを、一般的に家事按分と呼んでいます。按分を行う際に決められた統一的な基準はありませんが、誰が見ても納得できる合理的な割合を設けることが大切と言えます。床面積や作業時間、使用日数など、支出の性質に合った基準を選び、それを年間を通じて一貫して適用し続けることが求められます。適当な割合で申告してしまうと税務調査で根拠を問われるため、どのように計算したかを記録として残しておくようにしましょう。

面積や使用時間を用いた按分の具体例

家事按分の具体的な計算手順について、家賃を例に挙げて考えてみましょう。

たとえば、自宅全体の床面積が60平方メートルであり、そのうち事業専用に使っている部屋が15平方メートルだと仮定します。この場合、事業に使っている面積の割合は25パーセントとなるため、月額10万円の家賃であれば2万5千円を経費として計上できるというわけです。

また、電気代を按分する際には、仕事をしている時間をもとに計算する方法がよく用いられています。1日のうち8時間を仕事に費やしているなら、24時間中の3分の1に当たる約33パーセントを事業用として扱うといった考え方になります。インターネット代やスマートフォンの通信料についても、週のうち何日稼働しているかといった基準で割合を算出することが一般的と言えるでしょう。

不正な経費計上による 3 つのペナルティ

不正な経費計上による 3 つのペナルティ

意図的でなくても誤った申告をすると、税務調査でペナルティを科せられる場合があります。

  • 過少申告加算税申告内容に虚偽やミスがあった場合、追加税額の10%(当初申告税額または50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)が加算されます。調査前に自主的に修正すれば免除または軽減されます。
  • 無申告加算税期限内に申告できなかった場合、本来の税額の15%(50万円超300万円以下の部分は20%、300万円超の部分は30%)が加算されます(令和5年分以降)。税務署からの調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告を行うと5%に軽減。事前通知後でも調査実施前の申告は10%になります。法定期限から1か月以内の自主申告などでは加算税がかからないこともあります。
  • 不納付加算税・延滞税申告後に税金を納付しなかった場合、延滞税が発生します。源泉所得税を納付しない場合は不納付加算税の対象です。

まとめ

この記事で解説した個人事業主の経費に関する要点をまとめます。

  • 事業の売上に直接貢献する支出のみが、必要経費として認められます。
  • 経費を計上するには、支払いを客観的に証明できる領収書や明細書の保管が必須です。
  • 自宅兼事務所の家賃や光熱費は、面積や作業時間などの合理的な基準による「家事按分」が可能です。
  • プライベート支出の混同や誤った申告をすると、追徴課税などのペナルティを受けるリスクがあります。

正しい経理のルールを日々の業務に取り入れ、ご自身のビジネスの適正な節税と資金管理に活かしていきましょう。

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